これだけは書いておかなければならない。そんな気持ちで久しぶりにこのブログをしたためております。

 

僕は衣食住の基盤的消費に関してはいったいにUMS主義者であります。すなわち衣のユニクロ、住の無印、食のサイゼリヤ。この辺についてはすでにまとまった主張を書いているので、御用とお急ぎでない方は文春オンラインに寄稿した「UMS主義者、かく語りき」をお読みください。

 

日本が誇る消費財企業御三家。成熟しかつ競争がキビしい日本の消費市場における激烈な競争で鍛えに鍛えられたUMS。これほどイイものが世の中にあるでしょうか。質がイイのに低価格。消費者としては一方的に恩恵をこうむりまくりやがっているわけで、日本国民を代表してUMSには深くお礼を申し上げます。

 

UMSの商品にはいずれも完成度が高いものがそろっているのですが、UMS主義者として「これぞ殿堂入り」という商品を各社1品ずつご紹介しておきましょう。

 

U:Uniqlo UのコットンT。 かのクリストフ・ルメール(自身のブランド「ルメール」はもちろん、エルメスのアーティスティック・ディレクターだったことでも有名)がディレクションをしているUniqlo Uライン。この形、素材、縫製、色合いの全てにおいて完成されたTシャツがたったの1000円ポッキリ。現代の奇跡としかいいようございません。

 

M:極細毛歯ブラシ。毎日使う生活用具として機能とデザインが最高度にバランスされている逸品。290円。色はもちろんクリア。常時ストックしてあります。これはごく一例でありまして、無印の商品はギリギリまで詰められたデザインと商品群を横断するデザインの一貫性がたまりません。ナボナはお菓子のホームラン王かもしれませんが、無印は生活用品の三冠王です。

 

S:フレッシュチーズとトマトのサラダ。すなわちインサラータ・カプレーゼ。この品質と美味しさで299円。あまりに美味しいのでいつもWサイズ598円を注文しております。世界の外食産業でサプライチェーンの構築・運用において間違いなくもっとも優れているのがサイゼリヤでありまして、このシンプルな一皿を食べるとそのことがよどみなく分かりまくりやがります。これホント。

 

UMS御三家に加えて秀逸なのは住の分野のN。すなわちニトリ。UMSNは消費の四天王。この夏に寝床に引くひんやりとしたマットをNで購入したのですが、これなぞは言葉の正確な意味で「お、値段以上」。すでに秋となりましたが、盛夏の昼下がり、水シャワーの後のシーブリーズ大量塗布工程を経てニトリのマットに横になる瞬間。真夏の厳寒。これはもう思い出そうと思っても忘れられないほどの至福のひとときでした。来年の夏がいまから楽しみです。

 

このブログの初期でS8ぐらいだったS22はすでに家を出て生意気にも都内のマンションで暮らしています。彼女が引越しするときに「生活用品はすべてMで揃え給え」と指示を出しておいたのですが、S22はNの方が好みのようで、ベッドをMのにした以外はしきりとNに通ってラグだの家具だのを購入していました。

 

四天王にひとつ加えるとしたら食分野からRでしょう。すなわりリンガーハット。UMSNR(ウムスナーと読む。国連機関みたい)は日本の消費の五人囃子であります。今日もブランチでRを利用しました。僕の選択は「野菜たっぷり皿うどん」。当然ですけど。きくらげ(これが大スキ)トッピングとギョーザを追加して830円。優しい味つけでその名の通り野菜がたっぷり食べられます。マクドナルド(しばしば朝食で利用)やケンタッキー(サンダース大佐のレシピ恐るべし)もイイですが、Rこそが日本発の健康ファーストフードの本命であります。

 

で、UMS主義者というかウムスナリストの僕は、原則的にUの服しか着ないで生活するという社会実験に取り組んでおりまして、すでに開始以来18ヶ月になります。Tシャツやニットやフリースやジーンズやパンツ(ズボン。「感動パンツ」に感動)やパンツ(下着)やシャツやジャンパーやヒートテックやエアリズムはもちろん、ジャケットやドレスシャツやベルトや帽子もぜーんぶU。

 

「原則的に」というのは若干の例外があるからでありまして、どうしても上下そろいの背広を着なければならないときが35週間に1回ほどございます。このときは仕方なく、夏冬それぞれ1組だけ残してある(後は全部廃棄した)背広の上下を着用に及びます(ネクタイは3本しか持っていませんが、これも昔から使っているものでユニクロではない)。

 

もうひとつの例外は超重衣料のコートおよび革ジャンで、これにつきましては、この25年ほど使っているグレンフェルのダッフルコートおよびこれまた10年ほど使っているクロムハーツの名作革ジャン「JJディーン」、これだけは手放せないので使い続けています。

 

で、ここからが本題なのですが、これまでもあちこちで話したり書いたりしているように、僕は「オールマイティ・ウェア」という服飾生活のコンセプトを確立しております。「オールマイティ・ウェア」をご存知ない? 当然です。これは僕が20年ほど前に勝手に確立した概念でございまして、「(できる限り)いつでもどこでも同じ服を着ている」という生活様式を意味しています。

 

こう言うと、故スティーブ・ジョブズさんの黒いTシャツ(もしくはタートルネックのニット)とジーンズ姿を思い浮かべるかもしれません。しかし、これはオールマイティ・ウェアとは似て非なるものであることに注意が必要です。オールマイティ・ウェアというのは時間軸における着用の連続性に特徴があります。すなわち、起きている時も寝ている時も、家にいるときも外に出ている時も完全に同じ服装。これがオールマイティ・ウェア。

 

かくいう僕でも仕事の時はさすがにオールマイティ・ウェアを脱いで、デニムなどの「フォーマル・ウェア」に着替えます(それでも電通の仕事のときは隙あらばオールマイティ・ウェアで行ったりする)。ただ、家にいるときは、寝ても覚めても(比喩ではございません)オールマイティ・ウェア一本やり。外に出るときでも、犬の散歩やジムはもちろん、日用品の買い出し、郵便局や銀行などの用事、近所での外食(「ピザハウス・モッコ」、とんかつの「稲」、中華料理の「黒龍」、カレーの「エビン」、ハンバーグの「丘公園」などなど)、こうした用件は全てオールマイティ・ウェアで出かけます。

 

僕はきわめて常識的な人間なので、私的な用向きであっても人と会うときやちゃんとしたお店のときは、さすがにフォーマル・ウェア(デニムのこと)で出かける。しかし、そうした必要性がないときは銀座だろうと青山だろうと丸の内だろうと麻布だろうと、オールマイティ・ウェア。いやー本当にオールマイティ・ウェアってオールマイティですね!

 

講義や外回りがなく、日がな一日仕事場で仕事をする日などは、ここぞとばかりにオールマイティ・ウェアのまま仕事に出撃。朝起きてベッドからはい出たままの服装でそのまま仕事に行き、帰宅して(お風呂に入って下着は替えるものの)そのままの服装で眠り、翌朝起きてベッドからはい出たままの服装でそのまま仕事に行き…(以下4日間ほどループ)という、夢のようなストレスフリー・ライフが実現するのでありました。

 

よく「ワンマイルウェア」というような言い方をしますが、とんでもございません。僕の場合はワンマイルどころか、100マイル、1000マイル、1万マイル先まで起きたままのオールマイティウェアで出かけます。当然ですけど。カリフォルニアぐらいまでなら余裕でオールマイティウェア。当たり前ですけど。

 

この前も、インドのバンガロールに寝床から起きたままの格好で参りました。これがもう大正解で、ムンバイで乗換えだったのですが、バンガロール行きの国内便がいつまでたっても出発せず、深夜のムンバイ空港の劣悪な環境で何時間も足止めを食らったのですが、オールマイティウェアだったのでその辺で寝ころがって楽に過ごせました。

 

オールマイティウェアとして何を選ぶか。春夏は短パンTシャツ(もちろんU)でよいのですが、秋冬のオールマイティウェアを何にするかが問題です。何ぶん毎日のことですので、慎重の上にも慎重を重ねて最高にカンファタブルなものを厳選し、そのシーズンのオールマイティウェアに任命することにしております(いかんせん毎日着用するので、だいたい2シーズン、最長でも3シーズンで着つぶす)。

 

下はずっとグレーのスウェットパンツで変わらなかったのですが、上はイッセイミヤケの黒のスウェット(これは3シーズンに渡って昼夜なくフルに着ていたら、コットンがシルクのようになり最高だった)→パタゴニアの薄手のフリース「R3」→チャンピオン謹製スウェットシャツ→(社会実験開始と共に)Uniqlo Uのスウェットパーカというように変遷してまいりました。

 

で、今年に入って、ラクさという点ではこれ以上ない逸品を発見するに至りました。それがUの「スーパーストレッチスウェット」の上下であります。今年の1月からオールマイティウェア現行モデルとして導入し、秋になったのでまた引っ張り出してきて使っております。

 

これがそれ。360度どの方向にも果てしなくストレッチが利き、快適なことこの上なし。まさに究極のコンフォート。上下で1980円ポッキリ。

 

いつだったかミッドタウンのルシアン・ペラフィネのお店で70万円もするカシミアのセーターを試着したところ、店員の方が「これ、最高に気持ちイイでしょう」と言っていましたが、Uのスーパーストレッチスウェットの方がよっぽど気持ちイイ。しかも価格は350分の1。

 

ところが、です。世の中にそうそううまい話はないわけでして、この現行オールマイティウェアの問題点はどうしても範囲が1マイルに限られてしまうということ。モッコや黒龍や鷺沼東急ストア(いま名前が洒落たのに変わっているが忘れた)に行く分にはかまわないのですが、それ以上遠くに行くとさすがに「寝間着感」が強すぎて、丸の内やサンタモニカやデンパサールにこのまま行くのは躊躇せざるを得ません。

 

若い人ならイイかもしれませんが、後期ド中年のハゲがこの姿で出かけると、「浮浪者」というか「焼け出された人」というか「病院から抜け出してきた人」というか、いずれにせよ訳あり感が漂い過ぎてしまいます。これぞトレードオフ。快適性と汎用性の二律背反。このトレードオフだけはどうしても克服できず、以前であれば汎用性を優先しておりましたが、スーパーストレッチの安楽も捨てがたく、1マイル以上の場合はやむなくユニクロのスウェットパンツとUniqlo Uのスウェットパーカというフォーマルに着替えるようにしています。

 

以上、トレードオフに屈した悔しさで、やむにやまれず書いた次第でございます。電通の安田本部長、ユニクロのスーパーストレッチスウェット上下セットいかがでしょうか。