「あおもり歴史トリビア」第539号(令和5年1月27日配信)
2023/01/27 (Fri) 12:05
「あおもり歴史トリビア」第539号(令和5年1月27日配信)
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〈青森市メールマガジン〉
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こんにちは。文化遺産課の児玉です。前回は、雪橇を用いた環状列石の石材運搬について触れましたが、今回はそれ以外の運搬方法について考えてみたいと思います。
国内外の遺跡では、石の運搬方法はもとより、運搬に関わる組織の規模を推測するための実験が行われています。例えば、メキシコのオルメク遺跡で行われた実験では棒に吊られた2トンの石を35人で担ぎ、イギリスのストーンヘンジでは橇に載せた約2トンの石を32人で曳き、コロを用いた場合には24人で移動。イースター島では、10トン近くものモアイ像を載せた橇を180人で運んだといいます。
日本国内では、大阪府藤井寺市の三ツ塚古墳から出土した全長8メートルをこえる大修羅(しゅら:木製の橇)の発見を機に、14トンの石を載せた修羅の牽引実験が行われ、曳き手36人で15秒間、10メートル弱を移動することができました。
小牧野遺跡では、平成16年(2004)10月に、環状列石を構成する石材の運搬方法の検証と作業データを記録するための実験が行われています。運搬経路については、石材の採取地である荒川付近から遺跡までの丘陵地に、2つの経路を設定し、区間距離と傾斜角を計測しました。比較的勾配が緩い経路1(995.0m)では木橇とモッコ、急勾配ではありますが遺跡までの最短距離となっている経路2(387.6m)では背負子(しょいこ)が用いられました。
実験の結果、10キログラムほどの石を載せた背負子では、勾配約15度の急斜面(経路2)を15分で登ることができました。木橇については、重さ約90kgもの石を載せて4人で地曳きしました。途中、勾配がきつく、ぬかるみに足を取られた作業員が息を荒くしながら座り込む場面もありましたが、1時間程かけて目的地の環状列石まで到達しました。中型の石を運ぶのに最も威力を発揮したのがモッコによる担ぎ運搬でした。藤ヅルで縄綯いした網を、担い棒に通したモッコに約30kgの石を載せ、2人で快調に運ぶことができました。
縄文時代、膨大な量の石材を運搬するためには、大勢の人間を的確に動かすことができるリーダー格の人間や、さらに作業期間中の食糧の調達や調理に伴う人員など後援の人々との連携も含め、大規模な集団や熟達した組織力の存在が不可欠であったと思います。また、当時の衣食住に係る生計労働の配分時間を考えれば、これだけの作業量を短期間で行うことは非常に難しかったと思われることから、環状列石の運搬自体が、年に数回あるいは年に1回程度行われる、当時の多様な祭祀形態の一つであった可能性も考えられます。
《問合せ》
青森市民図書館 歴史資料室
TEL:017-732-5271
電子メール: rekishi-shiryo@city.aomori.aomori.jp
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-編集・発行---------
企画部広報広聴課
青森市中央1-22-5
TEL:017-734-5106
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国内外の遺跡では、石の運搬方法はもとより、運搬に関わる組織の規模を推測するための実験が行われています。例えば、メキシコのオルメク遺跡で行われた実験では棒に吊られた2トンの石を35人で担ぎ、イギリスのストーンヘンジでは橇に載せた約2トンの石を32人で曳き、コロを用いた場合には24人で移動。イースター島では、10トン近くものモアイ像を載せた橇を180人で運んだといいます。
日本国内では、大阪府藤井寺市の三ツ塚古墳から出土した全長8メートルをこえる大修羅(しゅら:木製の橇)の発見を機に、14トンの石を載せた修羅の牽引実験が行われ、曳き手36人で15秒間、10メートル弱を移動することができました。
小牧野遺跡では、平成16年(2004)10月に、環状列石を構成する石材の運搬方法の検証と作業データを記録するための実験が行われています。運搬経路については、石材の採取地である荒川付近から遺跡までの丘陵地に、2つの経路を設定し、区間距離と傾斜角を計測しました。比較的勾配が緩い経路1(995.0m)では木橇とモッコ、急勾配ではありますが遺跡までの最短距離となっている経路2(387.6m)では背負子(しょいこ)が用いられました。
実験の結果、10キログラムほどの石を載せた背負子では、勾配約15度の急斜面(経路2)を15分で登ることができました。木橇については、重さ約90kgもの石を載せて4人で地曳きしました。途中、勾配がきつく、ぬかるみに足を取られた作業員が息を荒くしながら座り込む場面もありましたが、1時間程かけて目的地の環状列石まで到達しました。中型の石を運ぶのに最も威力を発揮したのがモッコによる担ぎ運搬でした。藤ヅルで縄綯いした網を、担い棒に通したモッコに約30kgの石を載せ、2人で快調に運ぶことができました。
縄文時代、膨大な量の石材を運搬するためには、大勢の人間を的確に動かすことができるリーダー格の人間や、さらに作業期間中の食糧の調達や調理に伴う人員など後援の人々との連携も含め、大規模な集団や熟達した組織力の存在が不可欠であったと思います。また、当時の衣食住に係る生計労働の配分時間を考えれば、これだけの作業量を短期間で行うことは非常に難しかったと思われることから、環状列石の運搬自体が、年に数回あるいは年に1回程度行われる、当時の多様な祭祀形態の一つであった可能性も考えられます。
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