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「あおもり歴史トリビア」第583号(令和5年12月22日配信)

2023/12/22 (Fri) 12:00
「あおもり歴史トリビア」第583号(令和5年12月22日配信)

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〈青森市メールマガジン〉
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皆さん、こんにちは。文化遺産課の設楽です。

初めて耳にするかたが多いかもしれませんが、12月1日は、製鉄会社の業界団体である日本鉄鋼連盟によって「鉄の記念日」に定められています。これは、現在の岩手県釜石市大橋に建設された西洋式の高炉において、幕末の安政4(1857)年12月1日に盛岡藩士の大島高任が鉄鉱石から大砲鋳造用に適した「銑鉄(せんてつ)」とよばれる鉄の生産に成功したことを記念したものです。

以前の担当回(6月30日配信第560号)でも少し触れたように、日本では古代以来、伝統的に砂鉄を原料とした製錬によって鉄が生産されていましたが、西洋式の高炉による銑鉄生産の成功により、以後、鉄の原料が砂鉄から鉄鉱石に転換していき、近代製鉄へと技術革新を遂げる革命的な出来事となりました。

その後、大橋に隣接する地域でも鉄鉱石を原料とした西洋式の高炉が相次いで建設され、世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産として登録されている「橋野鉄鉱山」でも生産が行われました。

江戸時代には、青森県内でも鉄の生産が行われていました。現在の青森県西半分に相当する弘前藩においては、津軽半島の山間部が鉄生産の中心地であり、豊富な森林資源から生産した木炭と、陸奥湾沿い砂浜で採取される砂鉄を原料に鉄の生産が行われていました。藩の公式記録である「弘前藩庁日記(国日記)」などの文献史料によると、弘前藩内の主要な生産地には、現在の外ヶ浜町の小国鉄山(てつざん)、中泊町の今泉鉄山、蓬田村の江利前山鉄山のほかに、青森市奥内の奥内鉄吹(てつぶき)がありました。鉄山は、鉄の生産に係る施設や事務所などを含めた専業の生活圏、鉄吹は、銑鉄を中心とする生産形態を指します。

「弘前藩庁日記」の文献史料から、奥内鉄吹は、17世紀後半頃まで小国鉄山とともに弘前藩の主要な生産地であったと推定されます。元禄6(1693)年の記録では、鉄の調達先を小国から奥内に切り替えることが記載されています(『新青森市史』通史編第2巻近世)。

弘前藩における上記の鉄山を含め、奥内鉄吹については、現時点で、実際どこにあったか断定できませんが、地名が残る山間部においては、鉄の生産において排出される鉄滓(てっさい)とよばれる遺物が大量に落ちている場所があり、この鉄滓の存在と文献史料の比較から、鉄山があった場所が推定されています。奥内地区では、これまでそのような場所は確認されていませんでしたが、近年、奥内川上流の沢においては大量の鉄滓が確認されています。青森市の北部では、このほかにも山間部で大量の鉄滓が確認された場所が確認されており、今後文献史料との比較検討が期待されます。


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