「あおもり歴史トリビア」第621号(令和6年10月4日配信)
2024/10/04 (Fri) 12:00
「あおもり歴史トリビア」第621号(令和6年10月4日配信)
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〈青森市メールマガジン〉
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こんにちは。歴史資料室の村上です。
今年8月、JRバス東北の十和田北線(とわだほくせん)が運行開始90周年を迎えました。現在、この路線では記念エンブレムを取りつけた車両が運行されています(来年3月まで運行予定)。
青森駅と十和田湖を結ぶ十和田北線は省営自動車十和田線として昭和9年(1934)8月5日に開業しました。『官報』第2276号(昭和9年8月2日発行)には開業当初の停車場(バス停)の情報が掲載されています。これによると青森駅を出発したバスは、柳町、浦町停車場通、堤橋、第五連隊通、玉川、妙見と進んで八甲田・十和田湖方面へ向かっていました。
経路上に堤橋、玉川という停車場があることから、県道27号を経由して運行していたことがわかります。現在、青森駅-十和田湖間を運行する「みずうみ号」は国道NTT交差点を右折して国道103号を南へ進みますが、この経路による運行は昭和45年に始まりました。
さて、開業当初にあった停車場のうち、現在はない「第五連隊通」が気になり調べたところ、『官報』第4269号(昭和16年4月2日発行)に興味深い記述を見つけました。それは「昭和十六年四月十日ヨリ十和田線第五連隊通停車場ヲ『筒井通』ト改称ス」という鉄道省の告示です。「筒井通り」というバス停は現在、市営バス・JRバス東北が使用していますね。では、なぜ昭和16年に停車場名を改称することになったのでしょうか。
残念ながら、当時の新聞から改称に関する記事を見つけることはできませんでした。そこで、同じような事例を探したところ、省営自動車では昭和16年4月25日にも園篠線(えんじょうせん、京都府の園部駅と兵庫県の篠山口駅を結ぶバス路線)の「篠山兵営口」停車場を「誓願寺前」と改称していることがわかりました(『官報』第4286号)。篠山兵営とは篠山町(現丹波篠山市)にあった歩兵第七十連隊の兵営です。「第五連隊通」と「篠山兵営口」という停車場名には、附近に陸軍の連隊があることを示すという共通点があります。
実は、鉄道については昭和15年頃から軍事施設や貯水池など防衛上秘匿すべき施設の名称を掲げた駅名を改称する「防諜改称」が全国各地で行われていました。例えば、湘南電気鉄道(現京浜急行電鉄)の横須賀軍港駅は横須賀汐留駅、京阪電気鉄道の師団前駅は藤森駅と改称されています。こうした駅名の「防諜改称」とあわせてバスの停車場名も改称されたとみられます。
※今回の内容は『十和田北線開業五十周年記念誌』(1985年 日本国有鉄道東北地方自動車部青森自動車営業所)、『地域の信頼 明日への希望 十和田北線開業60周年記念』(1994年 JRバス東北 青森支店)、今尾恵介『消えた駅名』(2004年 東京堂出版)、今尾恵介『地名の社会学』(2008年 角川学芸出版)などを参考にしました。
《問合せ》
青森市民図書館 歴史資料室
青森市新町一丁目3番7号
TEL:017-732-5271
電子メール: rekishi-shiryo@city.aomori.aomori.jp
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青森駅と十和田湖を結ぶ十和田北線は省営自動車十和田線として昭和9年(1934)8月5日に開業しました。『官報』第2276号(昭和9年8月2日発行)には開業当初の停車場(バス停)の情報が掲載されています。これによると青森駅を出発したバスは、柳町、浦町停車場通、堤橋、第五連隊通、玉川、妙見と進んで八甲田・十和田湖方面へ向かっていました。
経路上に堤橋、玉川という停車場があることから、県道27号を経由して運行していたことがわかります。現在、青森駅-十和田湖間を運行する「みずうみ号」は国道NTT交差点を右折して国道103号を南へ進みますが、この経路による運行は昭和45年に始まりました。
さて、開業当初にあった停車場のうち、現在はない「第五連隊通」が気になり調べたところ、『官報』第4269号(昭和16年4月2日発行)に興味深い記述を見つけました。それは「昭和十六年四月十日ヨリ十和田線第五連隊通停車場ヲ『筒井通』ト改称ス」という鉄道省の告示です。「筒井通り」というバス停は現在、市営バス・JRバス東北が使用していますね。では、なぜ昭和16年に停車場名を改称することになったのでしょうか。
残念ながら、当時の新聞から改称に関する記事を見つけることはできませんでした。そこで、同じような事例を探したところ、省営自動車では昭和16年4月25日にも園篠線(えんじょうせん、京都府の園部駅と兵庫県の篠山口駅を結ぶバス路線)の「篠山兵営口」停車場を「誓願寺前」と改称していることがわかりました(『官報』第4286号)。篠山兵営とは篠山町(現丹波篠山市)にあった歩兵第七十連隊の兵営です。「第五連隊通」と「篠山兵営口」という停車場名には、附近に陸軍の連隊があることを示すという共通点があります。
実は、鉄道については昭和15年頃から軍事施設や貯水池など防衛上秘匿すべき施設の名称を掲げた駅名を改称する「防諜改称」が全国各地で行われていました。例えば、湘南電気鉄道(現京浜急行電鉄)の横須賀軍港駅は横須賀汐留駅、京阪電気鉄道の師団前駅は藤森駅と改称されています。こうした駅名の「防諜改称」とあわせてバスの停車場名も改称されたとみられます。
※今回の内容は『十和田北線開業五十周年記念誌』(1985年 日本国有鉄道東北地方自動車部青森自動車営業所)、『地域の信頼 明日への希望 十和田北線開業60周年記念』(1994年 JRバス東北 青森支店)、今尾恵介『消えた駅名』(2004年 東京堂出版)、今尾恵介『地名の社会学』(2008年 角川学芸出版)などを参考にしました。
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