「あおもり歴史トリビア」第671号(令和7年9月26日配信)
2025/09/26 (Fri) 12:00
「あおもり歴史トリビア」第671号(令和7年9月26日配信)
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〈青森市メールマガジン〉
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皆さん、こんにちは。文化遺産課の設楽です。
前回の担当分(令和7年6月27日配信 第658号)では、製鉄に必要な原料である砂鉄をテーマに取り上げました。今回は、もう一つ製鉄に不可欠なものとして、木炭を取り上げたいと思います。
日本古来の製鉄を行ううえで、木炭は、単なる燃焼材としてではなく、還元剤として欠かせない存在でした。酸化鉄である砂鉄や鉄鉱石から鉄を得るには、製錬炉(令和5年6月30日配信号No560参照)と呼ばれる粘土製の炉の中に砂鉄または鉄鉱石とともに木炭を投入して、大気と遮断された状態で高温に熱し、酸化鉄と一酸化炭素ガスを反応させ、酸化鉄の酸素を二酸化炭素として取り除くことが必要で、製鉄には砂鉄とともに大量の木炭が必要とされました。
江戸時代を迎える頃までに中国地方を中心に技術が確立した「たたら製鉄」では、1回の操業で5トンの鉄を生産するために、砂鉄と同量の18トンにも及ぶ木炭が必要とされました。木炭は、比較的軽いものの、かさばるために遠方から運び込むことには不向きであったため、鉄の生産場所に近いところで木炭を生産したり、鉄の生産場所そのものを山間部に設けることで、大量の木炭を供給できるようにしていたと考えられます。
江戸時代に弘前藩によって製鉄が行われた津軽半島において、現時点で確認されている当該期と推定される製鉄遺跡については、陸奥湾側にある河口から約5~6kmに相当するかなり山深い場所に位置しており、その立地は、木炭の供給の便が意識されたものと考えられます。
弘前藩庁日記の享保3年(1718)の記録では、現在の蓬田村に存在したとされる江利前山鉄山について、製鉄に用いる炭材として必要なヒバをとらせてほしい旨、鉄吹頭より申立がされており、江利前山鉄山では、10月頃に炭焼きが行われ、炭窯に薪を積み上げ、それを檜葉で覆い、蒸し焼きにしていたことが書かれています。
弘前藩の文献史料において、製鉄に関わる炭や炭焼きの記録は限られるため、炭焼きの実態は詳しくわからない部分もありますが、製鉄に必要な炭については、鉄の生産場所に近いところで生産していたものと推定されます。
《参考文献》
鈴木 瑞穂 2008 『イラストでみる はるか昔の鉄を追って~「鉄の歴史」探偵団が行く~』
雀部実・館充・寺島慶一編 2003 『近世たたら製鉄の歴史』
《問合せ》
青森市民図書館 歴史資料室
青森市新町一丁目3番7号
TEL:017-732-5271
電子メール: rekishi-shiryo@city.aomori.aomori.jp
青森市メールマガジンをご利用いただき、ありがとうございます。
登録の変更や利用停止の手続は、次の画面からどうぞ。
○青森市ホームページ
http://www.city.aomori.aomori.jp/mailmagazine-riyou.html
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日本古来の製鉄を行ううえで、木炭は、単なる燃焼材としてではなく、還元剤として欠かせない存在でした。酸化鉄である砂鉄や鉄鉱石から鉄を得るには、製錬炉(令和5年6月30日配信号No560参照)と呼ばれる粘土製の炉の中に砂鉄または鉄鉱石とともに木炭を投入して、大気と遮断された状態で高温に熱し、酸化鉄と一酸化炭素ガスを反応させ、酸化鉄の酸素を二酸化炭素として取り除くことが必要で、製鉄には砂鉄とともに大量の木炭が必要とされました。
江戸時代を迎える頃までに中国地方を中心に技術が確立した「たたら製鉄」では、1回の操業で5トンの鉄を生産するために、砂鉄と同量の18トンにも及ぶ木炭が必要とされました。木炭は、比較的軽いものの、かさばるために遠方から運び込むことには不向きであったため、鉄の生産場所に近いところで木炭を生産したり、鉄の生産場所そのものを山間部に設けることで、大量の木炭を供給できるようにしていたと考えられます。
江戸時代に弘前藩によって製鉄が行われた津軽半島において、現時点で確認されている当該期と推定される製鉄遺跡については、陸奥湾側にある河口から約5~6kmに相当するかなり山深い場所に位置しており、その立地は、木炭の供給の便が意識されたものと考えられます。
弘前藩庁日記の享保3年(1718)の記録では、現在の蓬田村に存在したとされる江利前山鉄山について、製鉄に用いる炭材として必要なヒバをとらせてほしい旨、鉄吹頭より申立がされており、江利前山鉄山では、10月頃に炭焼きが行われ、炭窯に薪を積み上げ、それを檜葉で覆い、蒸し焼きにしていたことが書かれています。
弘前藩の文献史料において、製鉄に関わる炭や炭焼きの記録は限られるため、炭焼きの実態は詳しくわからない部分もありますが、製鉄に必要な炭については、鉄の生産場所に近いところで生産していたものと推定されます。
《参考文献》
鈴木 瑞穂 2008 『イラストでみる はるか昔の鉄を追って~「鉄の歴史」探偵団が行く~』
雀部実・館充・寺島慶一編 2003 『近世たたら製鉄の歴史』
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