「あおもり歴史トリビア」第684号(令和7年12月26日配信)
2025/12/26 (Fri) 12:00
「あおもり歴史トリビア」第684号(令和7年12月26日配信)
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〈青森市メールマガジン〉
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前回の担当分(令和7年9月26日配信 第671号)では、製鉄に必要な原料である木炭をテーマに取り上げました。今回は、これまで紹介した砂鉄、木炭に加え、製鉄に不可欠であった物質として、粘土をテーマに取り上げたいと思います。
製鉄遺跡の発掘調査を行うと、製錬炉(令和5年6月30日配信号No560参照)の周辺からは、鉄滓(同No.560参照)とともに、焼けた粘土のようなものが多数出土します。これは、専門用語で炉壁(ろへき)と呼ばれる遺物で、粘土で形作られた製錬炉の炉体の破片です。製錬炉は、操業するたびに炉を壊して内部から鉄を取り出す必要があるため、炉体の構築と破壊が繰り返し行われました。青森県を含む東北北部における古代の製錬炉は、竪形炉と呼ばれる円筒状の炉で、高さは最大でも1m程度であったと推定されます。製錬炉の構築には、大量の粘土が必要であったと考えられます。
私が発掘調査を担当した青森市南部の野木(1)遺跡から出土した炉壁を見ると、高温下で鉄滓が付着した内面部分と、粘土が貼り付いている外面側の二層構造のものが多くあります。外面側の粘土は、単純に粘土だけではなく、粘土に砂や短く切った藁が混ぜられています。これは、粘土のつながりを強めて、炉体を作りやすくする意図があったものと考えられます。野木(1)遺跡から出土した炉壁には、幅2㎝程度の孔が水平方向に2箇所存在するものがあり、炉体の構造を強固するため、部分的に骨組みとなる心材が挿入されていたと考えられます。一方、内面側については、鉄滓の付着するものが多いですが、中には、熱を受けているものの鉄滓の付着がみられないもの、砂鉄が溶け切らずに固着しているものがあります。鉄滓の付着がみられないものや砂鉄が溶け切らずに固着しているものについては炉の上部、鉄滓の付着がみられるものは炉の下部と推定され、内面側の状態によって、おおよその位置を推定することができます。
製鉄において、炉壁のほかに粘土が関わるものとして、羽口(はぐち)という遺物があります。羽口は、直径5~6㎝程度の断面円形やかまぼこ形の筒状の土製品で、中心に直径2~3㎝の孔が開いており、製錬炉や鍛冶炉(令和5年9月29日配信号No572参照)の炉内に送風するための通風管として使用されました。このため、先端が溶けて鉄滓が付着しているほか、熱を受けて変色したものが見られます。羽口は、先端が溶けて短くなると次の操業では使えないため、操業のたびに新しいものが使用されたと推定され、野木(1)遺跡では竪穴建物跡のカマドの構築材として、使い終えた羽口が使用された例が認められます。
《問合せ》
青森市民図書館 歴史資料室
青森市新町一丁目3番7号
TEL:017-732-5271
電子メール: rekishi-shiryo@city.aomori.aomori.jp
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製鉄遺跡の発掘調査を行うと、製錬炉(令和5年6月30日配信号No560参照)の周辺からは、鉄滓(同No.560参照)とともに、焼けた粘土のようなものが多数出土します。これは、専門用語で炉壁(ろへき)と呼ばれる遺物で、粘土で形作られた製錬炉の炉体の破片です。製錬炉は、操業するたびに炉を壊して内部から鉄を取り出す必要があるため、炉体の構築と破壊が繰り返し行われました。青森県を含む東北北部における古代の製錬炉は、竪形炉と呼ばれる円筒状の炉で、高さは最大でも1m程度であったと推定されます。製錬炉の構築には、大量の粘土が必要であったと考えられます。
私が発掘調査を担当した青森市南部の野木(1)遺跡から出土した炉壁を見ると、高温下で鉄滓が付着した内面部分と、粘土が貼り付いている外面側の二層構造のものが多くあります。外面側の粘土は、単純に粘土だけではなく、粘土に砂や短く切った藁が混ぜられています。これは、粘土のつながりを強めて、炉体を作りやすくする意図があったものと考えられます。野木(1)遺跡から出土した炉壁には、幅2㎝程度の孔が水平方向に2箇所存在するものがあり、炉体の構造を強固するため、部分的に骨組みとなる心材が挿入されていたと考えられます。一方、内面側については、鉄滓の付着するものが多いですが、中には、熱を受けているものの鉄滓の付着がみられないもの、砂鉄が溶け切らずに固着しているものがあります。鉄滓の付着がみられないものや砂鉄が溶け切らずに固着しているものについては炉の上部、鉄滓の付着がみられるものは炉の下部と推定され、内面側の状態によって、おおよその位置を推定することができます。
製鉄において、炉壁のほかに粘土が関わるものとして、羽口(はぐち)という遺物があります。羽口は、直径5~6㎝程度の断面円形やかまぼこ形の筒状の土製品で、中心に直径2~3㎝の孔が開いており、製錬炉や鍛冶炉(令和5年9月29日配信号No572参照)の炉内に送風するための通風管として使用されました。このため、先端が溶けて鉄滓が付着しているほか、熱を受けて変色したものが見られます。羽口は、先端が溶けて短くなると次の操業では使えないため、操業のたびに新しいものが使用されたと推定され、野木(1)遺跡では竪穴建物跡のカマドの構築材として、使い終えた羽口が使用された例が認められます。
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