「あおもり歴史トリビア」第699号(令和8年4月24日配信)
2026/04/24 (Fri) 12:00
「あおもり歴史トリビア」第699号(令和8年4月24日配信)
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〈青森市メールマガジン〉
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文化遺産課の児玉です。本年度もよろしくお願いいたします。
今回は、昨年、鑑賞した「解体と記憶-人のあとに続く風景-泉田剛展」展覧会について紹介したいと思います。
この展覧会を知ったきっかけは、秋田県の考古学研究者・小林克氏から「青森出身の若手クリエイターによる展示なので、ぜひ一緒に」とお誘いをいただいたことでした。小林氏とは環状列石の研究を通じてつながりがあり、今回の訪問もそのご縁の延長にあります。
本展は、2025年11月29日から12月7日まで、青森県立美術館コミュニティギャラリーで開催されました。建築家・デザイナーの泉田剛氏が、藤崎町に実在し長らく放置されていた祖父の農機具小屋を解体し、古材や構造材を用いて新たな立体作品へと再構築したものです。失われゆく建物を「記憶をまとうオブジェクト」としてよみがえらせ、私たちが見過ごしがちな「朽ちゆく風景」に光を当てています。また、本作はフランス先史時代の巨石記念物・メンヒルに着想を得ており、土地に刻まれた痕跡を"再構築された遺跡"として象徴的に表現しています。
印象的だったのは、古材を再利用して構成された楕円球の作品です。変色した木材や錆びたトタンは単なる廃材ではなく、かつての暮らしと時間の蓄積を物語る存在です。そうした記憶の痕跡を丁寧にすくい上げることで、過去と現在、喪失と再生が交錯する時間が感じられる展示となっていました。
展示構成も見どころの一つです。中央の楕円球をL字型の展示台が取り囲む構成は、竪穴住居や環状列石に見られる円環的な空間を想起させます。人々が集う"中心"を意識した空間づくりがなされており、回遊しながら鑑賞できる点も印象的でした。
この構成についてお話を伺う中で、私が想起したのは、小牧野遺跡における環状列石の終末期の姿です。広場を囲むように列石が配置され、最終段階には中心に巨石を据え、その周囲に環状の配石が設けられた。すなわち、もともと広く使われた祭祀空間を意図的に狭め、"場"を閉じていく行為、いわば「環状列石じまい」とも表現できる行為があったのではないか。そういった仮説がふと脳裏をよぎりました。
泉田氏の試みは、個人的な郷愁に留まらず、空き家の増加や人口流出、地域風景の喪失といった、地方に共通する課題に対する応答でもあります。地方に暮らす者にとって「使われなくなった建物」は決して珍しくはありませんが、その多くは忘れられ、やがて姿を消し、いつしか"無かったもの"となり、長い時間の中で、それらは遺跡となっていくのでしょう。
本展は、解体という終わりの先に「再構築=アート」という新たな可能性を提示し、地域に残る素朴な風景に目を向け、失われゆくものの価値を問い直す、温かさと鋭さを併せ持った印象的な展示でした。
(文化遺産課 児玉)
青森市民図書館 歴史資料室
青森市新町一丁目3番7号
TEL:017-732-5271
電子メール: rekishi-shiryo@city.aomori.aomori.jp
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本展は、2025年11月29日から12月7日まで、青森県立美術館コミュニティギャラリーで開催されました。建築家・デザイナーの泉田剛氏が、藤崎町に実在し長らく放置されていた祖父の農機具小屋を解体し、古材や構造材を用いて新たな立体作品へと再構築したものです。失われゆく建物を「記憶をまとうオブジェクト」としてよみがえらせ、私たちが見過ごしがちな「朽ちゆく風景」に光を当てています。また、本作はフランス先史時代の巨石記念物・メンヒルに着想を得ており、土地に刻まれた痕跡を"再構築された遺跡"として象徴的に表現しています。
印象的だったのは、古材を再利用して構成された楕円球の作品です。変色した木材や錆びたトタンは単なる廃材ではなく、かつての暮らしと時間の蓄積を物語る存在です。そうした記憶の痕跡を丁寧にすくい上げることで、過去と現在、喪失と再生が交錯する時間が感じられる展示となっていました。
展示構成も見どころの一つです。中央の楕円球をL字型の展示台が取り囲む構成は、竪穴住居や環状列石に見られる円環的な空間を想起させます。人々が集う"中心"を意識した空間づくりがなされており、回遊しながら鑑賞できる点も印象的でした。
この構成についてお話を伺う中で、私が想起したのは、小牧野遺跡における環状列石の終末期の姿です。広場を囲むように列石が配置され、最終段階には中心に巨石を据え、その周囲に環状の配石が設けられた。すなわち、もともと広く使われた祭祀空間を意図的に狭め、"場"を閉じていく行為、いわば「環状列石じまい」とも表現できる行為があったのではないか。そういった仮説がふと脳裏をよぎりました。
泉田氏の試みは、個人的な郷愁に留まらず、空き家の増加や人口流出、地域風景の喪失といった、地方に共通する課題に対する応答でもあります。地方に暮らす者にとって「使われなくなった建物」は決して珍しくはありませんが、その多くは忘れられ、やがて姿を消し、いつしか"無かったもの"となり、長い時間の中で、それらは遺跡となっていくのでしょう。
本展は、解体という終わりの先に「再構築=アート」という新たな可能性を提示し、地域に残る素朴な風景に目を向け、失われゆくものの価値を問い直す、温かさと鋭さを併せ持った印象的な展示でした。
(文化遺産課 児玉)
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