「あおもり歴史トリビア」第445号
2021/02/26 (Fri) 11:00
「あおもり歴史トリビア」第445号(令和3年2月26日配信)
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〈青森市メールマガジン〉
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こんにちは。文化財課の児玉です。縄文時代の遺跡の発掘調査をしていると「2個一対の穴」があけられた土器が遺跡から出土することがあります。
青森市教育委員会では、東北縦貫自動車道八戸線の建設事業に伴い、平成8・9年(1996・97)に市内岩渡にある「熊沢遺跡」の発掘調査を実施したところ、斜面から大規模な捨て場跡が検出され、大量の縄文土器を発見しました。これらの土器を洗浄し復元していくと、「2個一対の穴」をもつ土器が相当数認められ、ほとんどが割れ目を挟んで対になっていました。この穴の正体は、「補修孔」と呼ばれるもので、紐のようなもので二つの穴を結束し、割れ目をつないだり、ヒビ割れが拡大しないようにしたものと考えられます。
皆さんご存じのように、縄文土器は、素焼きの焼き物であり、陶磁器と比べ壊れやすいものです。「熊沢遺跡」から見つかった土器は、縄文前期の円筒下層a式及びb式と呼ばれる型式がほとんどで、土器の胎土中に植物の繊維を混入させている点が特徴の一つです。土器の表面をよく観察してみると、繊維の形が残っていたり、繊維が抜け落ちていたりしているのがわかります。このような土器は、「繊維土器」とも呼ばれ、土器の焼成が不十分となるため、一般の縄文土器と比べて、さらに脆く壊れやすくなっています。この時期(型式)の土器に「補修孔」が多いのは、このためだと考えられます。
滋賀県にある湖底の縄文遺跡(粟津湖底遺跡)からは、補修孔に紐状の繊維がついた状態の土器片も見つかっています。しかも、紐で結束したあと、その上から割れ目も含めてパテのようなものを塗りこめ、念入りに補修しているのです。
このように、割れ目をふさいだり、接着したりする材料の一つに、「アスファルト」が挙げられます。特に、縄文後期後半に見られる注口土器に顕著にみられ、欠損した注口部と本体との接着に使用されています。また、土器ではありませんが、土偶にもアスファルト補修の痕跡がしばしば見られます。
以上のように、壊れた土器の多くは捨てられてしまいますが、中には、「補修孔」や「アスファルト補修」が見られる土器もあり、修復してまで使おうとする、縄文人の知恵や工夫が感じられます。
《問合せ》
青森市民図書館 歴史資料室
TEL:017-732-5271
電子メール: rekishi-shiryo@city.aomori.aomori.jp
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http://www.city.aomori.aomori.jp/koho-kocho/keitai-mini/top/mailmagazine.html
-編集・発行---------
企画部広報広聴課
青森市中央1-22-5
TEL:017-734-5106
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皆さんご存じのように、縄文土器は、素焼きの焼き物であり、陶磁器と比べ壊れやすいものです。「熊沢遺跡」から見つかった土器は、縄文前期の円筒下層a式及びb式と呼ばれる型式がほとんどで、土器の胎土中に植物の繊維を混入させている点が特徴の一つです。土器の表面をよく観察してみると、繊維の形が残っていたり、繊維が抜け落ちていたりしているのがわかります。このような土器は、「繊維土器」とも呼ばれ、土器の焼成が不十分となるため、一般の縄文土器と比べて、さらに脆く壊れやすくなっています。この時期(型式)の土器に「補修孔」が多いのは、このためだと考えられます。
滋賀県にある湖底の縄文遺跡(粟津湖底遺跡)からは、補修孔に紐状の繊維がついた状態の土器片も見つかっています。しかも、紐で結束したあと、その上から割れ目も含めてパテのようなものを塗りこめ、念入りに補修しているのです。
このように、割れ目をふさいだり、接着したりする材料の一つに、「アスファルト」が挙げられます。特に、縄文後期後半に見られる注口土器に顕著にみられ、欠損した注口部と本体との接着に使用されています。また、土器ではありませんが、土偶にもアスファルト補修の痕跡がしばしば見られます。
以上のように、壊れた土器の多くは捨てられてしまいますが、中には、「補修孔」や「アスファルト補修」が見られる土器もあり、修復してまで使おうとする、縄文人の知恵や工夫が感じられます。
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