常見陽平メルマガ『陽平界通信』 第350号 夏のイベント、いやこの社会は続くのか問題/ちくまプリマー新書が好きすぎて
2025/08/20 (Wed) 07:00
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◆◆◆◆ 常見陽平メルマガ
◆◆◆ 『陽平界通信』第350号
◆◆ 2025.8.20配信
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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◆◆◆━━━━━━━━━━━━━
今週のアウトライン
━━━━━━━━━━━━━◆◆◆
1.巻頭言
夏の風物詩、いや、
この社会はいつまで続くのか問題
2.記事傑作選
◇戦後80年を考える
◇熱中症から労働者を守れ
◇政治家と地元の夏祭り問題
3.ホンのひとこと
ちくまプリマー新書の素晴らしき世界
◆◆━━━━━━━
1.巻頭言
━━━━━━━◆◆
【夏の風物詩、いや、
この社会はいつまで続くのか問題】
まだまだ暑いですな。
私は次の代表作を執筆したり、
論文集に寄稿する論文を書いたり、
秋学期の教材の準備をしたりしつつ、
日々、家事、楽器の個人練習に没頭しています。
今さら、バーゲンで買い漁ったり。
さて。
音楽ライター、柴那典さんの記事を読んで、
色々、考えました。
もはや「夏フェス」は夏にできない?
猛暑で開催中止のリスクも…
いま起きている業界全体の大きな変化
https://d.bmb.jp/9/1454/6713/XXXX
夏フェスに変化が起きている、と。
熱中症対策が義務化される中、
開催中に強制終了になる可能性がある、と。
日程を秋にシフトするフェスや、
屋内で行うフェスも増えていると。
私、今年は(も)、SONICMANIAという
サマソニの前夜祭的なイベントに参加し。
Perfume、電気グルーヴ、きゃりーぱみゅぱみゅ、
THE SPELLBOUND(BOOM BOOM SATELLITESナンバーしばり)
などを堪能しました。
それぞれのLIVEも素晴らしかったのですが、
このお祭り的な空気感、大好きです。
気づけば、久々にオールでした。
東西のサマソニに、
北海道のライジングサンに、
さらに、フェスではないですが、
さいたまスーパーアリーナでは
ビリー・アイリッシュと、
音楽が盛り上がった週末でした。
あ、新日本プロレスの夏の祭典、
G1クライマックスもありましたね。
でも、「夏フェス、いや、
夏のイベント、いつまで続くのかな?」と
思うことはよくあります。
なんせ、言うまでもなく、暑いです。
地球温暖化を通り越して、地球沸騰化の時代です。
出演者も観客もスタッフも、身の安全が心配で。
他にも日本で、いつまで、手の届く料金で
海外アーティストのライブを
楽しむことができるのか、
会場の警備員は足りるのか、
移動が成立するのか、
水分や電力は大丈夫かなど、
素人視点でも不安はいっぱいです。
広陵高校の暴力や、
SNSでの誹謗中傷などが問題となり
注目を集めた甲子園ですが、
今年は開会式や
試合の開催時間の見直しが行われました。
ここで、甲子園以外の開催などを提案すると、
あまりに思い入れが強かったり、
他の移転先も現実的ではないと
猛烈に反対の声が起こったりするのですが
(それで一度、札幌開催論を提唱したことで、
大炎上しているのですが)。
開催地、開催時期、開催方法など含め、
見直しの余地はあるわけで。
なんせ、若年層の人口が減っていく中、
高校の統廃合などもあるわけで。
高校球児も指導者も減っていくのではないかと。
野球の練習、試合をする場の維持も大変なわけで。
もちろん、高校野球のあり方、
体質に対する意見もあります。
カップ麺を食べたくらいで
殴られる部活動が、続くのかと。
今回の暴力問題はその論争を
再燃させたとも言えるでしょう。
「野球ガチ勢」は部活動ではなく、
サッカーのように各チームに
U-18、U-15などのチームをつくり
運営するべきだという声もあり。
音楽やスポーツもそうですが、
なんせ、自分たちの地域、職場、家庭は
どうなるのだろうというのが、
庶民にとっての切実な問題であり。
今の暮らし、続くのかという危機感は
常にあります。はい。
最近、暑さ対策のための
空調服、水冷服が注目されているわけですが。
10年後、高級ブランドが
この手の服を出しているのではないかと
妄想したりします。
いや、宇宙服、モビルスーツを着て暮らす日、
地下や宇宙で暮らす日も、夢ではなく、
切実な事情でやってくるのではないか、とも。
軽妙に語っているようで、
暗い話になってしまいました。
明るくいきたいですね。
「試みの水平線
~常見陽平の人生相談RADIO~」という
番組をやっております。
↓YouTubeのアーカイブです
https://d.bmb.jp/9/1454/6714/XXXX
・・・番組スポンサー、激しく募集しています。
お声がけをぜひ。
番組で読み上げる人生相談もお待ちしております。
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いまのところの最新作
『50代上等!理不尽なことは
「週刊少年ジャンプ」から学んだ』
(常見陽平 平凡社新書)
https://d.bmb.jp/9/1454/6715/XXXX
をよろしくお願いします。
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朝日新聞デジタルでコメントをしております。
https://d.bmb.jp/9/1454/6716/XXXX
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ヤフージャパンでコメントをしております。
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2.記事傑作選
━━━━━━━━━◆◆
情報労連 常見陽平のはたらく道
戦後80年を考える
https://d.bmb.jp/9/1454/6718/XXXX
情報労連 常見陽平のはたらく道
熱中症から労働者を守れ
https://d.bmb.jp/9/1454/6719/XXXX
だから、政治家には、なりたくないんだ
政治家と地元の夏祭り問題
https://d.bmb.jp/9/1454/6720/XXXX
◆◆━━━━━━━━━━━
3.ホンのひとこと
━━━━━━━━━━━◆◆
【ちくまプリマー新書の素晴らしき世界】
10代の頃から新書が大好きである。
日常的に新書を買い続けているし、
読み続けている。
高校時代に力を入れたことの一つは、
図書館に入った岩波新書を
片っ端から読むことだった。
特に私が大学生だった90年代、
意識の高い会社員だった00年代は
空前の新書ブームがあり。
ちくま新書(そう、もっと
古くからありそうで、
筑摩書房は1994年に参入)、
光文社新書、中公新書ラクレなど、
あたらしいレーベルが立ち上がった。
音楽の世界では、
アーティストやジャンルではなく、
レーベルのファンというものがあり
(ジャンルに近いといえば近いけど)。
たとえば、
YOSHIKIが立ち上げたエクスタシーレコード、
横山健のPIZZA OF DEATH RECORDS、
小山田圭吾が主宰していたトラットリア
などがある。それぞれ、カラーがある。
いや、忘れちゃいけないのが
EPICソニーだ。
スージー鈴木さんのEPICソニー本は
傑作なのでぜひ。
スージー鈴木(2021)『EPICソニーとその時代』集英社新書
https://d.bmb.jp/9/1454/6721/XXXX
佐野元春、大沢誉志幸、岡村靖幸、渡辺美里、
TM NETWORKなどが所属した、
80年代に輝いていたEPICソニーについて検証した1冊だ。
新書にもレーベルというものがあり。
それぞれカラーというか、
芸風のようなものがある。
好きなレーベルの一つが、
ちくまプリマー新書である。
ちくま新書誕生から11年後の
2005年にスタートした。
普遍的なテーマを扱い、
敷居が低く、ライトである。
高校生、大学1、2年生向けのレベル感だ。
いや、中学生でも読めるだろう。
一方で、書き手は超一流で。
その道のプロが、10代、20代や、
初学者に向けてわかりやすく、
でも適度な深さで書いているのがナイスである。
私は、新書とは、
名店のランチのようなものだと思っている。
つまり、ディナーでは手が届かない
価格なり雰囲気のお店が、
庶民のために手頃な価格、雰囲気で
チャンスをくれているような。
でも、しっかり、美味しいという。
ちくまプリマー新書は、ランチどころか
名店のティータイム、
あるいは朝のビュッフェのような手軽さだ。
でも、しっかり美味しい。
昨年、私が読んだ本の中で
トップ5に入る面白さ、深さだったのが、
同レーベルから発売された平芳裕子の
『東大ファッション論集中講義』だった。
https://d.bmb.jp/9/1454/6722/XXXX
これは、まさに教養のための新書である。
『東大ファッション論集中講義』は、
東京大学文学部において史上初めて開講された
ファッション講義をもとに構成されたものであり、
その内容を臨場感ある形で再現している。
著者は、衣服を単なる装いとしてではなく、
人類の歴史そのものを
映し出す存在として提示する。
衣服は政治的、経済的、文化的事象と
不可分の関係にあり、
その象徴性と機能性が社会を規定してきた。
本書では、なぜココ・シャネルが
歴史に刻まれるデザイナーとなったのか、
日本人はいかにして
和服から洋服へと転換したのか、
といった問いに丁寧に答えている。
コンパクトな一冊に凝縮された知見は深く広く、
読者に知的刺激を与える。
今年のラインナップはどれも、
人々の知的好奇心を刺激するもの、
よりくだけて書くならば
「普段からなんとなく気になっている問い」に
こたえるものである。
https://d.bmb.jp/9/1454/6723/XXXX
同レーベルの8月の新刊、
石田光規『自己決定の落とし穴』は、
現代社会において美徳とされがちな
「自己決定」を根底から問い直す一冊である。
https://d.bmb.jp/9/1454/6724/XXXX
自己決定は勇ましく聞こえ、
自由や権利の保障と結びつくものとして
肯定的に語られることが多い。
しかし、本書が明らかにするのは、
それが時に人々を苦しめ、
息苦しさをもたらすという逆説的な現実である。
石田は、社会学的視点から
「決定と責任の関係」「人が決定を回避する理由」
「自己責任論」などを分析し、
豊富な理論的議論と調査データを提示する。
その射程は学問的論点にとどまらず、
「性的同意」「恋愛からの退避」
「タイパ志向」「推し活の行き詰まり」
「タワマン文学」「孤独・孤立」など、
SNSを賑わせる身近なテーマにまで及ぶ。
これにより、自己決定が
いかに日常生活の中で摩擦や苦悩を生み出すかが
具体的に描き出されている。
本書は、
読者の抱える疑問や不安に寄り添いながら、
その背景にある社会構造を解きほぐすものである。
軽やかな語り口でありながら、
射程の広さと分析の鋭さを兼ね備えた一冊であり、
現代における「自己決定」の実相を
理解するうえで必読の書といえる。
このレーベルは、
明らかに敷居を下げるつくりになっているものの、
しっかり本物である。
10代、20代の子ども、会社の部下に
プレゼントするのもよいが、
それだけではもったいない。
大の大人を唸らせる本が揃っている。
ビジネスパーソン、教育者、親にとっては、
わかりやすい説明の教科書だとも言えるだろう。
というわけで、テーマ、著者を追うのもよいが、
レーベルを追うという読書スタイルもある。
推しレーベルを探してみよう。
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皆さんからの人生相談メールを
お待ちしております。
件名に『人生相談』とご記入の上、
ペンネーム(実名も可)、
年齢(可能であれば)、
性別、相談内容をお送りください。
yoheitsunemi@gmail.comまで!
よろしくお願いします!
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配信停止等はこちらのURLからお願いします
https://d.bmb.jp/9/1454/6725/XXXX
発行人:常見陽平
お問い合わせ先 E-Mail
yoheitsunemi@gmail.com
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1.巻頭言
夏の風物詩、いや、
この社会はいつまで続くのか問題
2.記事傑作選
◇戦後80年を考える
◇熱中症から労働者を守れ
◇政治家と地元の夏祭り問題
3.ホンのひとこと
ちくまプリマー新書の素晴らしき世界
◆◆━━━━━━━
1.巻頭言
━━━━━━━◆◆
【夏の風物詩、いや、
この社会はいつまで続くのか問題】
まだまだ暑いですな。
私は次の代表作を執筆したり、
論文集に寄稿する論文を書いたり、
秋学期の教材の準備をしたりしつつ、
日々、家事、楽器の個人練習に没頭しています。
今さら、バーゲンで買い漁ったり。
さて。
音楽ライター、柴那典さんの記事を読んで、
色々、考えました。
もはや「夏フェス」は夏にできない?
猛暑で開催中止のリスクも…
いま起きている業界全体の大きな変化
https://d.bmb.jp/9/1454/6713/XXXX
夏フェスに変化が起きている、と。
熱中症対策が義務化される中、
開催中に強制終了になる可能性がある、と。
日程を秋にシフトするフェスや、
屋内で行うフェスも増えていると。
私、今年は(も)、SONICMANIAという
サマソニの前夜祭的なイベントに参加し。
Perfume、電気グルーヴ、きゃりーぱみゅぱみゅ、
THE SPELLBOUND(BOOM BOOM SATELLITESナンバーしばり)
などを堪能しました。
それぞれのLIVEも素晴らしかったのですが、
このお祭り的な空気感、大好きです。
気づけば、久々にオールでした。
東西のサマソニに、
北海道のライジングサンに、
さらに、フェスではないですが、
さいたまスーパーアリーナでは
ビリー・アイリッシュと、
音楽が盛り上がった週末でした。
あ、新日本プロレスの夏の祭典、
G1クライマックスもありましたね。
でも、「夏フェス、いや、
夏のイベント、いつまで続くのかな?」と
思うことはよくあります。
なんせ、言うまでもなく、暑いです。
地球温暖化を通り越して、地球沸騰化の時代です。
出演者も観客もスタッフも、身の安全が心配で。
他にも日本で、いつまで、手の届く料金で
海外アーティストのライブを
楽しむことができるのか、
会場の警備員は足りるのか、
移動が成立するのか、
水分や電力は大丈夫かなど、
素人視点でも不安はいっぱいです。
広陵高校の暴力や、
SNSでの誹謗中傷などが問題となり
注目を集めた甲子園ですが、
今年は開会式や
試合の開催時間の見直しが行われました。
ここで、甲子園以外の開催などを提案すると、
あまりに思い入れが強かったり、
他の移転先も現実的ではないと
猛烈に反対の声が起こったりするのですが
(それで一度、札幌開催論を提唱したことで、
大炎上しているのですが)。
開催地、開催時期、開催方法など含め、
見直しの余地はあるわけで。
なんせ、若年層の人口が減っていく中、
高校の統廃合などもあるわけで。
高校球児も指導者も減っていくのではないかと。
野球の練習、試合をする場の維持も大変なわけで。
もちろん、高校野球のあり方、
体質に対する意見もあります。
カップ麺を食べたくらいで
殴られる部活動が、続くのかと。
今回の暴力問題はその論争を
再燃させたとも言えるでしょう。
「野球ガチ勢」は部活動ではなく、
サッカーのように各チームに
U-18、U-15などのチームをつくり
運営するべきだという声もあり。
音楽やスポーツもそうですが、
なんせ、自分たちの地域、職場、家庭は
どうなるのだろうというのが、
庶民にとっての切実な問題であり。
今の暮らし、続くのかという危機感は
常にあります。はい。
最近、暑さ対策のための
空調服、水冷服が注目されているわけですが。
10年後、高級ブランドが
この手の服を出しているのではないかと
妄想したりします。
いや、宇宙服、モビルスーツを着て暮らす日、
地下や宇宙で暮らす日も、夢ではなく、
切実な事情でやってくるのではないか、とも。
軽妙に語っているようで、
暗い話になってしまいました。
明るくいきたいですね。
「試みの水平線
~常見陽平の人生相談RADIO~」という
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番組で読み上げる人生相談もお待ちしております。
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いまのところの最新作
『50代上等!理不尽なことは
「週刊少年ジャンプ」から学んだ』
(常見陽平 平凡社新書)
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2.記事傑作選
━━━━━━━━━◆◆
情報労連 常見陽平のはたらく道
戦後80年を考える
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情報労連 常見陽平のはたらく道
熱中症から労働者を守れ
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だから、政治家には、なりたくないんだ
政治家と地元の夏祭り問題
https://d.bmb.jp/9/1454/6720/XXXX
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3.ホンのひとこと
━━━━━━━━━━━◆◆
【ちくまプリマー新書の素晴らしき世界】
10代の頃から新書が大好きである。
日常的に新書を買い続けているし、
読み続けている。
高校時代に力を入れたことの一つは、
図書館に入った岩波新書を
片っ端から読むことだった。
特に私が大学生だった90年代、
意識の高い会社員だった00年代は
空前の新書ブームがあり。
ちくま新書(そう、もっと
古くからありそうで、
筑摩書房は1994年に参入)、
光文社新書、中公新書ラクレなど、
あたらしいレーベルが立ち上がった。
音楽の世界では、
アーティストやジャンルではなく、
レーベルのファンというものがあり
(ジャンルに近いといえば近いけど)。
たとえば、
YOSHIKIが立ち上げたエクスタシーレコード、
横山健のPIZZA OF DEATH RECORDS、
小山田圭吾が主宰していたトラットリア
などがある。それぞれ、カラーがある。
いや、忘れちゃいけないのが
EPICソニーだ。
スージー鈴木さんのEPICソニー本は
傑作なのでぜひ。
スージー鈴木(2021)『EPICソニーとその時代』集英社新書
https://d.bmb.jp/9/1454/6721/XXXX
佐野元春、大沢誉志幸、岡村靖幸、渡辺美里、
TM NETWORKなどが所属した、
80年代に輝いていたEPICソニーについて検証した1冊だ。
新書にもレーベルというものがあり。
それぞれカラーというか、
芸風のようなものがある。
好きなレーベルの一つが、
ちくまプリマー新書である。
ちくま新書誕生から11年後の
2005年にスタートした。
普遍的なテーマを扱い、
敷居が低く、ライトである。
高校生、大学1、2年生向けのレベル感だ。
いや、中学生でも読めるだろう。
一方で、書き手は超一流で。
その道のプロが、10代、20代や、
初学者に向けてわかりやすく、
でも適度な深さで書いているのがナイスである。
私は、新書とは、
名店のランチのようなものだと思っている。
つまり、ディナーでは手が届かない
価格なり雰囲気のお店が、
庶民のために手頃な価格、雰囲気で
チャンスをくれているような。
でも、しっかり、美味しいという。
ちくまプリマー新書は、ランチどころか
名店のティータイム、
あるいは朝のビュッフェのような手軽さだ。
でも、しっかり美味しい。
昨年、私が読んだ本の中で
トップ5に入る面白さ、深さだったのが、
同レーベルから発売された平芳裕子の
『東大ファッション論集中講義』だった。
https://d.bmb.jp/9/1454/6722/XXXX
これは、まさに教養のための新書である。
『東大ファッション論集中講義』は、
東京大学文学部において史上初めて開講された
ファッション講義をもとに構成されたものであり、
その内容を臨場感ある形で再現している。
著者は、衣服を単なる装いとしてではなく、
人類の歴史そのものを
映し出す存在として提示する。
衣服は政治的、経済的、文化的事象と
不可分の関係にあり、
その象徴性と機能性が社会を規定してきた。
本書では、なぜココ・シャネルが
歴史に刻まれるデザイナーとなったのか、
日本人はいかにして
和服から洋服へと転換したのか、
といった問いに丁寧に答えている。
コンパクトな一冊に凝縮された知見は深く広く、
読者に知的刺激を与える。
今年のラインナップはどれも、
人々の知的好奇心を刺激するもの、
よりくだけて書くならば
「普段からなんとなく気になっている問い」に
こたえるものである。
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同レーベルの8月の新刊、
石田光規『自己決定の落とし穴』は、
現代社会において美徳とされがちな
「自己決定」を根底から問い直す一冊である。
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自己決定は勇ましく聞こえ、
自由や権利の保障と結びつくものとして
肯定的に語られることが多い。
しかし、本書が明らかにするのは、
それが時に人々を苦しめ、
息苦しさをもたらすという逆説的な現実である。
石田は、社会学的視点から
「決定と責任の関係」「人が決定を回避する理由」
「自己責任論」などを分析し、
豊富な理論的議論と調査データを提示する。
その射程は学問的論点にとどまらず、
「性的同意」「恋愛からの退避」
「タイパ志向」「推し活の行き詰まり」
「タワマン文学」「孤独・孤立」など、
SNSを賑わせる身近なテーマにまで及ぶ。
これにより、自己決定が
いかに日常生活の中で摩擦や苦悩を生み出すかが
具体的に描き出されている。
本書は、
読者の抱える疑問や不安に寄り添いながら、
その背景にある社会構造を解きほぐすものである。
軽やかな語り口でありながら、
射程の広さと分析の鋭さを兼ね備えた一冊であり、
現代における「自己決定」の実相を
理解するうえで必読の書といえる。
このレーベルは、
明らかに敷居を下げるつくりになっているものの、
しっかり本物である。
10代、20代の子ども、会社の部下に
プレゼントするのもよいが、
それだけではもったいない。
大の大人を唸らせる本が揃っている。
ビジネスパーソン、教育者、親にとっては、
わかりやすい説明の教科書だとも言えるだろう。
というわけで、テーマ、著者を追うのもよいが、
レーベルを追うという読書スタイルもある。
推しレーベルを探してみよう。
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ペンネーム(実名も可)、
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