常見陽平メルマガ『陽平界通信』第352号 「センス」は「教養」同様、面倒臭いのだが/いまどき人気のある大学とは
2025/09/03 (Wed) 07:53
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◆◆◆ 『陽平界通信』第352号
◆◆ 2025.9.3 配信
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今週のアウトライン
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1.巻頭言
「必要なのはお金じゃなくてセンスです」
2.記事傑作選
◇就活面接録音サービスの
是非を考えるその前に
3.常に見テイル これが気ニナル
人気のある大学とは何か問題
◆◆━━━━━━━
1.巻頭言
━━━━━━━◆◆
【「必要なのはお金じゃなくてセンスです」】
8月、終わっちゃいましたね。
邦楽の歌詞に出てくる
「夏は終わらない」
「終わらない夏」が
現実になりつつあり。
朝晩は、やや涼しいものの、まだまだ暑いですね。
実は小中高と、若い頃は
オフコース(若い人のために→小田和正がいたバンドです)
をよく聴いていたのですけど。
「夏の終り」という曲には
「夏は冬に憧れて 冬は夏に帰りたい」とあり。
「僕の贈り物」という曲には
「夏と冬の間に秋をおきました
だから秋は少しだけ中途半端なのです」とあり。
わかるなと思いつつ、だんだん、
四季の区分が曖昧になっているような、
極論、夏と冬しかないのではないか
という国になっているような。
札幌の情け容赦なく寒い秋や、
こちらの、少しずつ涼しくなっていく秋が
好きだったのですけど。
海に一度も行かない夏でした。
暑すぎましてね。
今年は家族旅行にも行きませんでした。
まあ、これは、娘に
「与えすぎない」
「やりたい、行きたいと言うまで待つ」
ことを徹底したからですが。
ひたすら原稿を書き、
ふらりとライブレストランや映画館に行き。
義理の両親の介護に奮闘する妻を支え、
何度もクルマを出し。
そんな8月が終わりました。
さて。
ある大手総合住宅関連企業の企業内大学で、
「情報とどう向き合うか」という講座を
もう5年にわたって担当しているのですけど。
手前味噌ですけど、大変に好評なようで。
受講生も多く。
少しずつ進化しているのですけど
今年の講義でこだわっているのは
「センスを磨け」ということです。
情報を集めるにせよ、真偽を確かめたり、
取捨選択したり、活用したりするにせよ、
「センス」が大事である、と。
すぐに、サクッと、情報の真偽を
確認するのは困難で。
そんなことをしよとすると
ますます騙されることがあるわけで。
これだけ情報があふれ、
論争(のようなもの)が起こり、
「ただしさ」が「正確」ではなく
「正義」とすり替わり、
嘘、偽の情報、誇張された情報が拡散する時代に、
さらにはAIが様々なものを代替する時代に、
必要なのはセンスではないかと。
それは、情報の判断だけの話ではなく。
何かを提案するにしろ
自分の印象にしろ
センスは大事なのではないかと。
ただ、このセンスという言葉は魔物で。
面倒くさいのです。
「教養」という言葉と似ているのです。
一般的には意味がわかりにくく、
なんとなく使っているのではないかと。
さらに、時に暴力的になるのです。
「教養がない」「センスがない」と言われると、
もう反論する気が起きないくらいに
叩きのめされるわけです。
なかなか身につきにくい点も共通しているのです。
教養に関して言えば、
「10分で身につく教養」「1冊でわかる教養」
などと言われると
「そんなもの教養って言えるのか」と
言いたくなりますし、一方で
「最低でも◯◯と◯◯と◯◯を読んでから言え」
などと言われると、
いちいち正論で理解はしつつも
「あぁ、教養、めんどくせえ」と
なるのではないでしょうか。
そもそも論で、何のための教養なのでしょう。
気づけばビジネスのためになっていないか、と。
このあたり、レジーさんの傑作
『ファスト教養』(集英社新書)が
参考になりますので、是非、
まだ読んでいない方は手にとってください。
https://d.bmb.jp/9/1454/6818/XXXX
この本と、昨年、よく売れ、話題となった
三宅香帆さんの(破竹の勢いですね)
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』
(集英社新書)
https://d.bmb.jp/9/1454/6819/XXXX
一昨年話題となった稲田豊史さんの
『映画を早送りで観る人たち』(光文社新書)
https://d.bmb.jp/9/1454/6820/XXXX
あたりを読むと、
今どきのビジネスパーソンの忙しさと、
文化的生活の両立について
考えることができるかと。
さて「センス」です。どうやってこれを磨くのか?
センスと言っても、このあたり、
ビジネスに必要な情報を集め、選び、
活用するセンスと、
たとえば、よくセンスを使う場面である、
ファッション、さらには飲食店や料理選び、
プレゼント選びなどでは異なり。
・・・いや、本当に異なるのですかね。
共通点もあるように思います。
企業内大学では
「常見さんの言うセンスとは、
感性のことですか?」
という質問が出たのですけど。
「はい」と答えそうになったのですが、
いや、そうなのかな、と。
実は、「これがよい」「すてきだ」と
感じる感性だけでなく、それを表現する、
かたちにする、実現する理性、知性も含めて
センスなのではないか、と。
これは今では文学部の哲学科に分類され、
「人文学系」とくくられる「哲学」が、
実は古代には数学や自然学をも含む包括的な知の営みだった
という話と通じるものがあります。
センスは「感性」だけではないのです。
センスを磨くためにどうするか。
私は、「“センスがよいな”と感じる人」から
学ぶことにしています。
できるだけ、Instagramなどではなく、
雑誌や身近な人、ショップの店員から学ぶことにしており。
さらに(これが浪費家と言われる理由ですけど)、
ちゃんと文化的なことにお金を使う、と。
おしゃれ、グルメにお金をかける、と。
結果、視野が広がっていたら、経験値がたまっていたら
それは浪費ではありません(開き直っているようにみえるでしょうが)。
さらには試行錯誤、
よりストレートに言うと、失敗することです。
二桁万円以上のお金をかけて買った服で、
「似合わないな」と失敗したことは
一度や二度ではありません。
数回着て、若い友人や教え子に譲ってしまった服は
何着あるのでしょう。
ただ、経験値はたまっているのです。
「教えていただく」ことも大事にしており。
先週末、1本の新しいメガネと、もう1本、
度入りサングラスのレンズを交換したものが届き。
信頼しているショップに、
所有しているすべてのメガネ、
度入りサングラスを持ち込み。
自分に足りないものは何か、
ご提案していただきました。
結果、いかにもTOMFORDな、太い縁の、
人生で最高額のメガネをゲットし。
もともと持っていたTOMFORDのサングラスの
レンズをフォレストという、森のような緑色に
したわけですが。
ナイスな提案だったのですけど。
その提案のセンスから学ぶわけです。はい。
というわけで、センスのいい人から謙虚に学ぶ、
お金と時間を惜しまない、
コスパ志向、タイパ志向に抗うことが、
私のセンスの磨き方です。
もう20年にわたって愛読している
雑誌『LEON』のキャッチコピーは
「必要なのはお金じゃなくてセンスです」でして。
そうか、あれだけ高い服、グルメ、クルマ、
宿なんかを紹介しているのに。
でも、なんて、素敵なんでしょう。
いつも、料理をつくるたびに
家族からセンスがよいと褒められるのですが、
そのたびに、まるで自分が考えたかのように
「必要なのはお金じゃなくてセンスです」と
口にするのです。
いや、妻はネタ元を知っていますけど。
でも、よく調べたら・・・。
雑誌として提案しているのは創刊以来ずっと
「費用対効果の高い消費」なのだそうで。
「どれだけ高いものでも自己満足より
客観評価=モテるか否かが基準」なのだそうで。
そこかよ。
FMサルースのラジオ番組
「試みの水平線~常見陽平の人生相談RADIO~」
今週、第3回目をお届けしました。
↓YouTubeのアーカイブです
ブルーハーツ論でした
https://d.bmb.jp/9/1454/6821/XXXX
・・・番組スポンサー、激しく募集しています。
お声がけをぜひ。
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『50代上等!理不尽なことは
「週刊少年ジャンプ」から学んだ』
(常見陽平 平凡社新書)
https://d.bmb.jp/9/1454/6822/XXXX
をよろしくお願いします。
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朝日新聞デジタルでコメントをしております。
https://d.bmb.jp/9/1454/6823/XXXX
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ヤフージャパンでコメントをしております。
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2.記事傑作選
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就活面接録音サービスの是非を考えるその前に
https://d.bmb.jp/9/1454/6825/XXXX
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3.常に見テイル これが気ニナル
━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◆
【人気のある大学とは何か問題】
このメルマガの編集をしてもらっている、
高校の同級生、愛さんの娘さんは高3で。
つまり、受験生というわけだ。
8月上旬に、
オープンキャンパスめぐりのために上京し。
ランチをしつつ、進路選択に関する話をきいた。
志望大学について話を聞いたのだが、
今どきの高校生から見える大学像、志望度など
について聞き、時代の変化を感じた。
本学も、先週末で夏のオープンキャンパスがすべて終了し。
大盛況で、おかげさまで
動員記録が何度も更新された。
1回に2800人の申し込みがあり、ほぼ同人数来場したことも。
もちろん、最近では、
高校1、2年生の夏休みの宿題で
「オープンキャンパスに行ってレポートを書く」
というものがあり。
今年、高校1年生になった姪っ子も、
ある大学のオープンキャンパスに参加していた。
ただ、これは今に始まった話ではないので。
高校まわり、広告・宣伝などに
力を入れたというのもあるのだが。
高校生に支持されているということなのだろう。
そう思いたい。実際、熱を感じた。
というわけで、
大学関係者なので書きにくいはずなのだけど、
あなたと私の解放区である、このメルマガなので、
空気読まずに最近の大学事情について書く。
愛さんの娘さんの声もそうだが・・・。
そして、進学に限らず、
就職などでもそうだが・・・。
「ぼくのかんがえるりそうのだいがく」と
現状の、現実の大学事情は異なる。
つまり、あなたが思っているよりも
今の大学やその位置づけは変化している。
教育の中身、知名度、好感度、偏差値、
就職実績、卒業生の活躍、愛校心などなど、
指標、着眼点は多数あるが、
これらは常に変化している。
保身のために具体的には書かないが、
早慶上智、MARCH、日東駒専、
大東亜帝国、関関同立、産近甲龍などという
カテゴリーがもはや現状と合わなくなっている。
まあ、これ自体、当事者からすると
余計なお世話だ、となるわけだけど。
看板学部が看板倒れ学部になった大学、
新たな看板学部が生まれた大学もある。
つまり学部間格差が広がったということでもある。
そういえば、15年くらい前にネット上で
「MARCHといえば、明治は男くさい、
青学は軽い、立教はちゃらい、
中央は暗い、法政は危ない」という
投稿を見かけたことがあるが、
(くれぐれも保身のために言うが、
私が言ったんじゃないぞ)
これまた、現在の実態とも、
さらには15年前の状況とも、
大きくズレているのは言うまでもない
(いや、実際にそうだぞと
反論されたらどうしよう)。
そもそも、一部の学生のイメージで
大学を語るのはナンセンスなのだけど。
いや、たとえばその頃、すでに明治大学は
都市型の洗練された大学となっており、大学のイメージも
学生の実態も、「男臭い」ものから
完全に脱却していたわけで。
それは当時の高校生の評価などからも
明らかであり。
この、以前見かけた「評価(のようなもの)」が
すでにズレていたことがわかるわけだけど。
複数合格した場合に
どの大学・学部を選んだかという
学生たちの選択も興味深く。
必ずしも偏差値、知名度順に
選ばない受験生もいる。
ちょうど、リクルート進学総研から、
大学関連の最新データが公開されており。
「進学ブランド力調査2025」をみてみよう。
プレスリリースはこちら
https://d.bmb.jp/9/1454/6826/XXXX
詳細な中身はこちら(志願した大学ランキングと、
知っている大学ランキングが出ている)
https://d.bmb.jp/9/1454/6827/XXXX
「志願したい大学」について
全国を7エリア(関東甲信越、東海北陸、関西、
北海道、東北、中四国、九州沖縄)に分けて
調査した結果がこれだ。
【関東甲信越】
1位:明治大学
2位:早稲田大学
3位:立教大学
【東海北陸】
1位:名城大学
2位:名古屋大学
3位:中京大学
【関西】
1位:関西大学
2位:近畿大学
3位:大阪公立大学
【北海道】
1位:北海道大学
2位:北海学園大学
3位:北海道科学大学
【東北】
1位:東北学院大学
2位:東北大学
3位:山形大学
【中四国】
1位:岡山大学
2位:広島大学
3位:山口大学
【九州沖縄】
1位:福岡大学
2位:熊本大学
3位:九州大学
このデータだけでなく、
詳細版をみて、30位くらいまで
眺めてみると、より状況がわかる。
関東甲信越、東海北陸、関西、
東北、九州沖縄の5エリアで
私立大学が1位になっている。
くれぐれも言うが、
あくまで「志願したい大学」ではあり、
教育の質のランキングではない。
調査対象、サンプル数などにも
留意するべきではあるが、現状、こうなっている。
個人的には、北海道において
北海道科学大学が躍進し、
トップ3に入ったことに、
驚きつつも納得しており。
何度かFD(簡単にいうと教員向けの研修)の
講師としてお邪魔したことがあり。
若い学長がリーダーシップを発揮しており
変革モードの熱を感じた。
そう、熱を感じる大学であり、存在感が高まっている。
もちろん、あくまで志願したい大学ランキングであり。
これだけで判断してはいけない。
くれぐれも言うが
志願したい大学のランキングと
その大学の研究、教育の力、偏差値などは
別問題である。
大学の状況と関係なく、マクロな環境変化が
「志願したい」という気持ちに影響を与えることもある。
たとえば、経済環境が厳しくなれば
夢よりも現実をとるし、さらには、受ける大学も絞るわけだ。
結果、「受かりそうな大学の中でベストを選ぶ」という
行動をとる。
偏差値というものに相変わらず注目が集まるが
入試の形式が多様化しており
その位置づけも、私のような50代が
大学受験をした頃から変化している。
なお、よく問われる
「これから生き残る大学とは何か?」
という議論があるわけだが。
身も蓋もないが、メディアが
まず書かない、そしてSNS上の
議論ともまったく異なる明確な答は
「財務が盤石な大学」である。
よく、偏差値が低い、定員割れしている
学部があるなどが論点になり
「そんな大学など潰れて当然」
という議論が巻き起こるが
財務という視点を忘れてはならない。
この点についてメディアは
光をあててほしいし、もっと議論するべきだ。
ただし、普通にみていてはよくわからない問題である。
偏差値が低い、定員割れしている
さらには、今回、財務官僚の発言などが
炎上気味になった「高校の補習のような
講義をしている大学がある」という論も
気持ちはわからなくはないが、ややズレている。
むしろ、それが「丁寧な指導」と受け止められる
こともあるわけで。
偏差値が高い、低いではなく
様々なステークホルダーから支持されているか
どうかという論点を忘れてはならない。
偏差値が低くて、全国的な知名度が低くても
地域の高校生と企業から支持されており
募集状況も安定しているという大学はあるわけで。
学生がまったく理解できない、
指導スキルが低い教員による自根満足の講義が
展開されており、
学生は単位をとり卒業するのだが
あまり成長しない大学をどうみるか。
知名度も評価も高いのだが、募集停止になってしまった
大学が存在することをどうみるか。
このあたりの視点は必要だ。
何度も繰り返すように(こういうのをみて
こいつはわかっていないと叩く奴がいるからな、
保身のためでもあるからな)
ランキングがすべてではない。
もっとも、そのランキングをもとに
各大学が巻き返し図ろうとし、そこでせめぎあい
うまくいくとポジティブな競争がおき
大学・学部が進化していくこともある。
広告宣伝、広報活動「だけ」で前進するような
ものでもない。
だから、大学は、学部は見ているだけでも面白い。
私たちも大学の見方を
常にアップデートしなくてはならず。
昔のイメージで語られると、
関係者はたまったものではないのである。
そんな見方が、高校生たちの進路選択、さらには
未来を歪めていないか、と。
そして、ラベルもレベルもともに大切で。
片方だけで語ってはいけない。
いつの間にか、レベルではなく、
ラベルの話をしていることもよくあるわけだ。
これまた、難しいところで
レベルは大事だが、ラベルも大事なのである。
これは両輪なのだ。
まだまだ書きたいことがあるが、この辺で。
まずは、母校も含め、
気になる大学の今をウォッチしてみよう。
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
皆さんからの人生相談メールを
お待ちしております。
件名に『人生相談』とご記入の上、
ペンネーム(実名も可)、
年齢(可能であれば)、
性別、相談内容をお送りください。
yoheitsunemi@gmail.comまで!
よろしくお願いします!
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
配信停止等はこちらのURLからお願いします
https://d.bmb.jp/9/1454/6828/XXXX
発行人:常見陽平
お問い合わせ先 E-Mail
yoheitsunemi@gmail.com
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「必要なのはお金じゃなくてセンスです」
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人気のある大学とは何か問題
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1.巻頭言
━━━━━━━◆◆
【「必要なのはお金じゃなくてセンスです」】
8月、終わっちゃいましたね。
邦楽の歌詞に出てくる
「夏は終わらない」
「終わらない夏」が
現実になりつつあり。
朝晩は、やや涼しいものの、まだまだ暑いですね。
実は小中高と、若い頃は
オフコース(若い人のために→小田和正がいたバンドです)
をよく聴いていたのですけど。
「夏の終り」という曲には
「夏は冬に憧れて 冬は夏に帰りたい」とあり。
「僕の贈り物」という曲には
「夏と冬の間に秋をおきました
だから秋は少しだけ中途半端なのです」とあり。
わかるなと思いつつ、だんだん、
四季の区分が曖昧になっているような、
極論、夏と冬しかないのではないか
という国になっているような。
札幌の情け容赦なく寒い秋や、
こちらの、少しずつ涼しくなっていく秋が
好きだったのですけど。
海に一度も行かない夏でした。
暑すぎましてね。
今年は家族旅行にも行きませんでした。
まあ、これは、娘に
「与えすぎない」
「やりたい、行きたいと言うまで待つ」
ことを徹底したからですが。
ひたすら原稿を書き、
ふらりとライブレストランや映画館に行き。
義理の両親の介護に奮闘する妻を支え、
何度もクルマを出し。
そんな8月が終わりました。
さて。
ある大手総合住宅関連企業の企業内大学で、
「情報とどう向き合うか」という講座を
もう5年にわたって担当しているのですけど。
手前味噌ですけど、大変に好評なようで。
受講生も多く。
少しずつ進化しているのですけど
今年の講義でこだわっているのは
「センスを磨け」ということです。
情報を集めるにせよ、真偽を確かめたり、
取捨選択したり、活用したりするにせよ、
「センス」が大事である、と。
すぐに、サクッと、情報の真偽を
確認するのは困難で。
そんなことをしよとすると
ますます騙されることがあるわけで。
これだけ情報があふれ、
論争(のようなもの)が起こり、
「ただしさ」が「正確」ではなく
「正義」とすり替わり、
嘘、偽の情報、誇張された情報が拡散する時代に、
さらにはAIが様々なものを代替する時代に、
必要なのはセンスではないかと。
それは、情報の判断だけの話ではなく。
何かを提案するにしろ
自分の印象にしろ
センスは大事なのではないかと。
ただ、このセンスという言葉は魔物で。
面倒くさいのです。
「教養」という言葉と似ているのです。
一般的には意味がわかりにくく、
なんとなく使っているのではないかと。
さらに、時に暴力的になるのです。
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なかなか身につきにくい点も共通しているのです。
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などと言われると
「そんなもの教養って言えるのか」と
言いたくなりますし、一方で
「最低でも◯◯と◯◯と◯◯を読んでから言え」
などと言われると、
いちいち正論で理解はしつつも
「あぁ、教養、めんどくせえ」と
なるのではないでしょうか。
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気づけばビジネスのためになっていないか、と。
このあたり、レジーさんの傑作
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つまり、受験生というわけだ。
8月上旬に、
オープンキャンパスめぐりのために上京し。
ランチをしつつ、進路選択に関する話をきいた。
志望大学について話を聞いたのだが、
今どきの高校生から見える大学像、志望度など
について聞き、時代の変化を感じた。
本学も、先週末で夏のオープンキャンパスがすべて終了し。
大盛況で、おかげさまで
動員記録が何度も更新された。
1回に2800人の申し込みがあり、ほぼ同人数来場したことも。
もちろん、最近では、
高校1、2年生の夏休みの宿題で
「オープンキャンパスに行ってレポートを書く」
というものがあり。
今年、高校1年生になった姪っ子も、
ある大学のオープンキャンパスに参加していた。
ただ、これは今に始まった話ではないので。
高校まわり、広告・宣伝などに
力を入れたというのもあるのだが。
高校生に支持されているということなのだろう。
そう思いたい。実際、熱を感じた。
というわけで、
大学関係者なので書きにくいはずなのだけど、
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空気読まずに最近の大学事情について書く。
愛さんの娘さんの声もそうだが・・・。
そして、進学に限らず、
就職などでもそうだが・・・。
「ぼくのかんがえるりそうのだいがく」と
現状の、現実の大学事情は異なる。
つまり、あなたが思っているよりも
今の大学やその位置づけは変化している。
教育の中身、知名度、好感度、偏差値、
就職実績、卒業生の活躍、愛校心などなど、
指標、着眼点は多数あるが、
これらは常に変化している。
保身のために具体的には書かないが、
早慶上智、MARCH、日東駒専、
大東亜帝国、関関同立、産近甲龍などという
カテゴリーがもはや現状と合わなくなっている。
まあ、これ自体、当事者からすると
余計なお世話だ、となるわけだけど。
看板学部が看板倒れ学部になった大学、
新たな看板学部が生まれた大学もある。
つまり学部間格差が広がったということでもある。
そういえば、15年くらい前にネット上で
「MARCHといえば、明治は男くさい、
青学は軽い、立教はちゃらい、
中央は暗い、法政は危ない」という
投稿を見かけたことがあるが、
(くれぐれも保身のために言うが、
私が言ったんじゃないぞ)
これまた、現在の実態とも、
さらには15年前の状況とも、
大きくズレているのは言うまでもない
(いや、実際にそうだぞと
反論されたらどうしよう)。
そもそも、一部の学生のイメージで
大学を語るのはナンセンスなのだけど。
いや、たとえばその頃、すでに明治大学は
都市型の洗練された大学となっており、大学のイメージも
学生の実態も、「男臭い」ものから
完全に脱却していたわけで。
それは当時の高校生の評価などからも
明らかであり。
この、以前見かけた「評価(のようなもの)」が
すでにズレていたことがわかるわけだけど。
複数合格した場合に
どの大学・学部を選んだかという
学生たちの選択も興味深く。
必ずしも偏差値、知名度順に
選ばない受験生もいる。
ちょうど、リクルート進学総研から、
大学関連の最新データが公開されており。
「進学ブランド力調査2025」をみてみよう。
プレスリリースはこちら
https://d.bmb.jp/9/1454/6826/XXXX
詳細な中身はこちら(志願した大学ランキングと、
知っている大学ランキングが出ている)
https://d.bmb.jp/9/1454/6827/XXXX
「志願したい大学」について
全国を7エリア(関東甲信越、東海北陸、関西、
北海道、東北、中四国、九州沖縄)に分けて
調査した結果がこれだ。
【関東甲信越】
1位:明治大学
2位:早稲田大学
3位:立教大学
【東海北陸】
1位:名城大学
2位:名古屋大学
3位:中京大学
【関西】
1位:関西大学
2位:近畿大学
3位:大阪公立大学
【北海道】
1位:北海道大学
2位:北海学園大学
3位:北海道科学大学
【東北】
1位:東北学院大学
2位:東北大学
3位:山形大学
【中四国】
1位:岡山大学
2位:広島大学
3位:山口大学
【九州沖縄】
1位:福岡大学
2位:熊本大学
3位:九州大学
このデータだけでなく、
詳細版をみて、30位くらいまで
眺めてみると、より状況がわかる。
関東甲信越、東海北陸、関西、
東北、九州沖縄の5エリアで
私立大学が1位になっている。
くれぐれも言うが、
あくまで「志願したい大学」ではあり、
教育の質のランキングではない。
調査対象、サンプル数などにも
留意するべきではあるが、現状、こうなっている。
個人的には、北海道において
北海道科学大学が躍進し、
トップ3に入ったことに、
驚きつつも納得しており。
何度かFD(簡単にいうと教員向けの研修)の
講師としてお邪魔したことがあり。
若い学長がリーダーシップを発揮しており
変革モードの熱を感じた。
そう、熱を感じる大学であり、存在感が高まっている。
もちろん、あくまで志願したい大学ランキングであり。
これだけで判断してはいけない。
くれぐれも言うが
志願したい大学のランキングと
その大学の研究、教育の力、偏差値などは
別問題である。
大学の状況と関係なく、マクロな環境変化が
「志願したい」という気持ちに影響を与えることもある。
たとえば、経済環境が厳しくなれば
夢よりも現実をとるし、さらには、受ける大学も絞るわけだ。
結果、「受かりそうな大学の中でベストを選ぶ」という
行動をとる。
偏差値というものに相変わらず注目が集まるが
入試の形式が多様化しており
その位置づけも、私のような50代が
大学受験をした頃から変化している。
なお、よく問われる
「これから生き残る大学とは何か?」
という議論があるわけだが。
身も蓋もないが、メディアが
まず書かない、そしてSNS上の
議論ともまったく異なる明確な答は
「財務が盤石な大学」である。
よく、偏差値が低い、定員割れしている
学部があるなどが論点になり
「そんな大学など潰れて当然」
という議論が巻き起こるが
財務という視点を忘れてはならない。
この点についてメディアは
光をあててほしいし、もっと議論するべきだ。
ただし、普通にみていてはよくわからない問題である。
偏差値が低い、定員割れしている
さらには、今回、財務官僚の発言などが
炎上気味になった「高校の補習のような
講義をしている大学がある」という論も
気持ちはわからなくはないが、ややズレている。
むしろ、それが「丁寧な指導」と受け止められる
こともあるわけで。
偏差値が高い、低いではなく
様々なステークホルダーから支持されているか
どうかという論点を忘れてはならない。
偏差値が低くて、全国的な知名度が低くても
地域の高校生と企業から支持されており
募集状況も安定しているという大学はあるわけで。
学生がまったく理解できない、
指導スキルが低い教員による自根満足の講義が
展開されており、
学生は単位をとり卒業するのだが
あまり成長しない大学をどうみるか。
知名度も評価も高いのだが、募集停止になってしまった
大学が存在することをどうみるか。
このあたりの視点は必要だ。
何度も繰り返すように(こういうのをみて
こいつはわかっていないと叩く奴がいるからな、
保身のためでもあるからな)
ランキングがすべてではない。
もっとも、そのランキングをもとに
各大学が巻き返し図ろうとし、そこでせめぎあい
うまくいくとポジティブな競争がおき
大学・学部が進化していくこともある。
広告宣伝、広報活動「だけ」で前進するような
ものでもない。
だから、大学は、学部は見ているだけでも面白い。
私たちも大学の見方を
常にアップデートしなくてはならず。
昔のイメージで語られると、
関係者はたまったものではないのである。
そんな見方が、高校生たちの進路選択、さらには
未来を歪めていないか、と。
そして、ラベルもレベルもともに大切で。
片方だけで語ってはいけない。
いつの間にか、レベルではなく、
ラベルの話をしていることもよくあるわけだ。
これまた、難しいところで
レベルは大事だが、ラベルも大事なのである。
これは両輪なのだ。
まだまだ書きたいことがあるが、この辺で。
まずは、母校も含め、
気になる大学の今をウォッチしてみよう。
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